【建設 × 生成AI】詳細設計と図面設計を自動化する生成AI Copilot:SWAPP
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詳細設計と図面設計を自動化できる生成AI Copilot「SWAPP」を徹底解説。
住宅や施設を建設する際には、設計作業が必要になります。
設計作業は2次元の図面を複数角度から書き起こした書類を作成することが古くから現在まで続く主流のやり方です。これをデジタル化したものが2D CADと言われるような設計ソフトウェアです。
(引用:https://www.autodesk.co.jp/solutions/2d-cad-software )
しかし、2次元の図面は平面図になるため、建設に使用する材料の重さや強度を考慮した設計になっているか計算できない、という懸念点があります。
一方で3D CADであれば、3Dにモデリングされているため完成図をイメージしながら設計ができる上に、各パーツの重さや強度、耐熱性などの情報も盛り込んだ上でシミュレーション設計ができます。
ただし、通常は図面に書き起こしたものを3D CADでモデリングしていく、という流れを取るため、3D CADでのモデリング中に修正が発生した場合は、図面の方にも修正を加えなければならず、この工程に工数を要するという課題があります。
こうした課題を解決するために登場したのが、BIM(Building Information Modeling)です。
詳細は下記の記事で解説されていますが、BIM上の建材パーツは幅や奥行き、高さのような基本的な情報から、組み立てるまでの工程や時間も盛り込むことが可能です。
さらに、平面図の作成もBIM上で行うことができ、3Dモデリングの最中に修正を加えた際には平面図や立面図、断面図など全ての設計図面が自動修正されるようになっています。
平面図と3D図面の整合性が自動で保たれるため、見積契約の段階で予算とのズレが生じにくくなるというメリットがあります。
(引用:https://www.sbbit.jp/article/cont1/36038 )
BIMの中でも最も広く使用されているのが、AutoDesk社が提供している「Revit」というBIMです。(Revitサービスページ)
今回は、Revitに対応した形式で詳細設計や図面設計を自動化する生成AI Copilot、「SWAPP」を紹介します。
SWAPPの概要
SWAPPはイスラエルに拠点を置く、反復的な設計や3Dモデリング、設計文書を自動化する生成AIサービスを提供するスタートアップです。
共同創業者CEOのEitan Tsarfati氏とCSO(Chief Science Officer:最高科学責任者)のAdi Shavit氏は元々、家の間取りやインテリア、照明などのデザインを3Dモデリングで好きなように設計できるサービスを提供する、Homestylerというスタートアップの共同創業者でした。
Homestylerの3Dモデリングのプレビュー画面(引用:https://www.homestyler.com/?lang=ja_JP )
HomestylerはRevitを提供しているAutoDesk社に買収されており、Tsarfati氏 と Shavit氏はしばらくの間、AutoDesk社で働いていました。
AutoDeskで働いていた2人は、Revitで提供しているBIMが、建築家にとって機能として不十分であることを、企業内部から実感していたとのことです。
Tsarfati氏は、
「建物の設計には、実現可能性調査・テストフィット・概念設計・VDC(Virtual Design and Construction:仮想設計施工)・DCA(Design Constructability Analysis:設計施工性分析)などさまざまな工程があります。しかしConstruction Documents(CD:施工図面)は最も退屈な作業であり、DD(Design Development:設計開発)からCDの段階まで、建築家が最も多くの時間を費やす部分です。」
という見解を述べています。
これはRevitを使用していても時間を要する工程であり、概念設計によって決定した簡易的なプラン図、立面図、模型などからDD、CDを完成させるためには少なくとも3ヶ月以上はかかります。
Homestylerを起業していた2人にとってDD・CDの自動化は、彼らが元々開発していたサービスと要件が似ていることから、生成AIを活用したSWAPPが開発されました。(上がHomestylerで、下がSWAPPの画面)
(引用:https://www.homestyler.com/?lang=ja_JP )
(引用:https://aecmag.com/ai/swapp-the-algorithmic-assistant/ )
SWAPPの機能
SWAPPのサービスページでは詳しい機能が説明されていませんが、AEC MagazineというメディアがSWAPPの機能について詳細までまとめていたため、こちらの情報を参考に機能を解説します。
Swapp: the algorithmic assistant
SWAPPのコア機能はこれまでにも触れているように、概念設計段階の簡易的な設計図から、詳細設計と図面設計を自動で作成することです。
概念設計図をSWAPPにアップロードすると、SWAPP内の独自のBIMモデラーが起動し、作業を開始します。グリッドレイアウトから始まり、詳細部分では窓やバルコニーをどのように配置するかも自動でモデリング・図式化されます。
この機能の便利な点は、ユーザーとなる建設会社・建築家の過去プロジェクトから、これまでに設計したRevitモデルや平面図を学習させることができることです。
これにより、設計方法が体系的なドキュメントになっていない場合でも、生成AIが自社の詳細設計や平面図のパターンを学習し、注釈を付け加える場所や建築物ごとに扱う資材・デザインを踏襲してくれます。
また、過去にRevitモデルがない場合でも、一般的にベストプラクティスと言われるような設計に基づいて詳細設計を行ってくれるため、ユーザーは難しいことを意識せずともすぐにサービスを導入・使用できるようになっています。
(引用:https://aecmag.com/ai/swapp-the-algorithmic-assistant/ )
こうした設計図の完成には通常3ヶ月以上はかかりますが、SWAPPであれば45分でレイアウトも含む詳細設計を作成することができます。また、SWAPPによる成果物はRVT形式(Revitで扱われるファイル形式)に変換してエクスポートされるため、成果物をRevit上で編集することができます。
80~90%の設計を生成AIに任せ、残りを人手で実装するような仕様になっているため、人間とAIが上手く協力するような仕事のあり方が実現されています。
SWAPPの機能をどのように実現しているか
SWAPPは、住宅・学生向け宿泊施設・オフィス設計など、建物のタイプごとに設計の中核となるルールとなる設計決定言語(DDL:Design Decision Language)を利用することによって、建物の空間配置や壁の構造、ドアスタイル、家具配置などを自動で特定しながら、Revitモデルを生成することを可能にしています。
この設計決定言語は、家具・部屋・材料など建物の詳細を含む、ユーザー固有の設計図から得られるデータとライブラリにリンクされて作成されるため、過去に作成したRevitモデルからユーザーの設計パターンを学習し、ユーザー好みの設計を行うことができます。
生成AIは、ユーザーの設計をパターン化して分類を行うことや、設計決定言語を作成する部分にも使用されていることが予想されます。
生成AIによって設計決定言語が作成され、その設計決定言語を、詳細設計させる際のプロンプト(大規模言語モデルへの指示文)として使用しているのではないかと推測しています。
まとめ
SWAPPは過去の設計パターンを生成AIに学習させることで、3Dモデリングの詳細設計と図面設計を自動化していることがわかりました。
弊社でも建設業のお客様と設計の自動化についてご相談をいただくことがあり、社内で研究開発を進めております。
また、私たちは大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。
それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。
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