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フォワーダー特化のSaaSにAI Copilotを搭載:fr8Labs

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フォワーダーの業務を効率化するため、自社のSaaSに音声ベースの生成AI Copilotを搭載したfr8Labsを解説します。

物流には、荷主とのやり取り・倉庫管理・出庫・配達・請求などさまざまな業務があります。こうした業務の中には、積載率(トラックなどの輸送機器の最大積載量に対し、実際に積載した荷物量)の低さや実質稼働時間(ドライバーの勤務時間のうち、実際に荷物の輸送を行っている時間)の短さ、2024年問題(働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課され、ドライバー不足になると言われている問題)など、多くの課題が取り上げられています。

これらの物流業務に生成AIを組み込んだとしたら、どのような業務がより効率化・自動化されるのかについて、ベンチャーキャピタルやコンサルティング会社が考察している記事は多く見られます。しかし、実際に自社業務に生成AIを活用している企業や、生成AIを組み込んだサービスを展開する企業の事例は、あまり聞いたことがないのではないでしょうか。

今回は、物流業者向けにSaaSを提供している海外のスタートアップが、生成AIをSaaSに組み込んだ事例を紹介していきます。自社で物流業務を行っている法人の方にとっても、生成AIの具体的な使い方に関する、新たなヒントが見つかるかもしれません。

フォワーダーの業務を自動化する物流スタートアップ:fr8Labs


インドネシアとシンガポールに拠点を構える物流スタートアップ「fr8Labs」は11月末、シードラウンドで150万ドル(約2億1000万円)を調達しました。主な投資家として、East Venturesが出資を行っています。


Core – Full Fledged Forwarder System

fr8Labsはフォワーダーが行っている、見積もり・予約確認・出荷オペレーション・決済の4つの業務に対し、それぞれを効率化するための機能を提供しています。

見積もりでは、運送業者が提携している物流パートナーの料金や輸送スケジュール、輸送国間における税関要件などの情報から、フォワーダーが荷主からの発注に対する見積もりを算出することを可能にします。

また、予約確認では、配達する荷物のスペースを確保するためのメールや、顧客との契約、荷主や物流パートナーなど全ての関係者に必要な書類の準備など、手続きに必要な書類やメールを瞬時に取り出せる機能がついています。

出荷オペレーションでは、税関手続きに必要な情報の提供や、出荷した荷物の追跡、荷物の引き渡しポイントでの連絡、例外管理(船・トラックの遅延や見落とされた荷物の積み替えなど)をサポートします。

決済では、物流パートナーへの支払状況や荷主への請求と回収状況、コスト計算のレポートなどが一目で分かるようなインターフェースを提供しています。

これらの機能の中でもとりわけ業務を効率化している点は、ユーザーが一度出荷指示書のPDFをアップロードすると、PDFに記載されている情報から、税関に提出する必要のある書類や、出荷予約の書類が自動的に作成されることです。同様に見積書をアップロードすると、そこから情報を抽出し、必要な項目が自動入力された状態で出荷指示書を作成することも可能です。書類の自動作成機能により、ユーザーであるフォワーダーが何度も同じデータを入力する必要がなくなります。さらにfr8Labsは、多数かつ小規模のフォワーダーや運送業者からなる、東南アジアの物流構造に対し、より良いソリューションを提供するため、サービス上の情報をAPIとして使用できるようにしています。(そのサービス上だけでなく、APIというものを使用することでデータのみを取得し、他のシステムに利用することができます。)これによりERPパッケージ(会計管理・販売管理・在庫購買管理・生産管理・人事急所管理システムから)や荷主・運送業者毎に異なるシステムと情報を連携させることができます。

フォワーダーが顧客ごとに複数のシステムにログインして、情報を転記する作業も不要ですし、APIを利用してデータを取得し、インターフェースは自社用にカスタマイズすることも可能です。SaaSとしてのサービス提供に留まらず、業界構造に適した形で、よりインフラに近いようなクラウドベースの機能も提供しているのです。

SaaSに生成AIを組み込む

fr8Labsが資金調達を行った理由の1つは、自社のSaaSに生成AIを搭載し、機能を拡充するためです。現在はデモ動画のみが公開されていますが、このデモの通りに機能がサービスイン(正式な機能として一般公開されること)されれば、フォワーダーは全ての情報を手動で入力する必要がなくなります。下記はデモ動画が紹介されているページです。

Fr8bot AI Co-Pilot

デモ動画の内容は、AI Copilotと称されるチャットボットに音声で指示を出すと、聞いた内容をAI Copilotが自然言語に書き起こし、fr8Labsの該当画面に自動で情報が入力されていく、というものです。

例えば、「63 Ocean Driveという住所の、Glen lieという名前の顧客情報を作成して」と話すと、顧客情報登録画面が開き、氏名の入力と住所入力が自動で行われます。また、「ジャカルタからシンガポールまでの出荷情報を、荷受業者をADC Shippingにして登録して」と話すと、出荷情報の入力と登録が自動で行われています。

上記のページでは2つのデモ動画が紹介されていますが、2つ目の動画では技術的にどのような実装をしてこの機能を実現しているかも見せてくれています。

WhatsAppの音声入力機能を使用して、音声を送信すると、AWS(Amazonが提供するクラウドサービス)のEC2というサーバーの中で、音声からテキスト情報への変換が行われ、テキスト情報と情報操作に必要なデータ(JSONという形式のデータ)をレスポンスとして返します。

そのレスポンスはWhatsAppの新たなメッセージとして返信され、「あなたが言ったのは”〜〜”という言葉です。詳細はこちらで間違いなければ、 “Proceed” と話してください。」という確認のメッセージが来ます。”Proceed”と返答すると、はじめに指示した内容が実行されます。

音声で指示が出せるようになることで得られる利点は、PC操作に慣れていない人でも、サービスを適切に使えるようになることです。物流・海運業では、実業務を行う人たちが必ずしもPC操作に慣れているとは限りませんので、文字による入力ではなく音声入力機能が搭載されているのは、利用者の特性を考慮していると言えるでしょう。

fr8Labsから学ぶ、物流業務における生成AIの活用方法


fr8LabsのAI Copilotから学べる点は、音声入力への対応が、実業務を担う人たちが生成AIを使いこなすにあたり、重要なファクターになるということです。

工場や倉庫で日々業務に追われている人たちにとって、生成AIのような新しい技術や複雑なシステムを前提とするソリューションは、「使いづらいもの」と思われてしまう可能性があります。彼らに使いやすいと思ってもらうための手段として、音声入力は有効な施策であり、今後は音声入力をベースとした生成AIのサービスがスタンダードとなるかもしれません。



まとめ

fr8Labsは、音声入力から自然言語に変換することにより、システムの操作を行う可能性を示してくれました。今回の事例では、SaaSの機能として生成AIが活用されていますが、自社でのみ使用するツールとして、生成AIを他社よりも多くの業務で活用できると、同業他社に対し競合優位性を築くことができます。

弊社でも、音声入力から自然言語に変換を行い、生成AIのタスクに落とし込む取り組みを実施しています。特に弊社は、大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。

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