物流業界の海外AIスタートアップ5選
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物流業界における最先端の海外AIスタートアップを紹介!コスト削減だけでなく、生産性向上に伴う売上拡大サービスも多数。

今回紹介する海外の物流AIスタートアップは、従来可視化されていなかった配送状況や取引先の稼働状況を可視化し、データを活用・分析した運用改善を実現しています。こうした海外の事例から、「自社の業務に活用できそう」といった新たな視点を提供できれば大変幸いです。
1. Bringg
Bringgは自社で車両を所有している企業向けにフリート管理(自社の車両群を効率的に運用・管理すること)を最適化する「ROAD」というサービスと、自社で車両を持たず運送業者に配送委託する企業向けに、運送業者の選定を効率化・自動化する「Delivery Hub」というサービスを提供しています。
「ROAD」は主に、最終拠点からエンドユーザーへの配達であるラストマイルを行う企業向けのサービスです。主な機能として、ルート最適化とオートディスパッチを提供しています。ルート最適化の機能は、交通渋滞、気象条件、車両定員、配達時間枠などの複数の要素を考慮した上で、移動距離を最小限に抑え、燃料消費量を最小限に抑えることができます。またオートディスパッチとは、オンデマンドの注文に対して最も速く、効率的に配達ができる車両を自動で割り当てる機能のことです。ドライバーが使用するスマホアプリも提供しており、ドライバーはこのアプリを使うことで、配達状況・位置情報の管理や、顧客からの問い合わせへの迅速な対応が可能になります。
「Delivery Hub」は200以上の運送業者の情報をダッシュボードから確認することができ、配送オプションも加味した上で各運送業者の料金の見積を比較することができます。また、運送業者の選定について事前定義した要件を入力し、運送業者を自動で割り当てることも可能です。これにより業者選定にかかる工数を削減し、浮いた時間の分だけ出荷効率を向上させることができます。

2. Locus
Locusはインド発の、配送ルート最適化をコア機能としたソフトウェアを提供するスタートアップです。AmazonでAI関連の業務に携わっていたソフトウェアエンジニアが創業したこの会社は、配送ルートを自動で割り当てるサービスがないことに気づき、ルート最適化や貨物の割り当ての課題を解決するプロダクトを作りました。今日の物流は、小売店への配送だけでなく、EC物流などの一般消費者向けの配送が増加したことで、不定期の注文に対して納期が当日や翌日になるなど、配達要件が複雑化しています。Locusはそうした複雑な要件に対してもリアルタイムの配送管理や配送ルートの分析・改善を行うことができます。また最短距離を走ることにより燃料費が削減できることに加え、サステナビリティの文脈でも非常に価値のあるものとなります。
Locusは配送ルートの最適化だけでなく、業務の自動化も次の視野に入れているようです。具体的には、請求書発行システムや支払いシステムとドライバーをリンクさせ、配送日に支払額を計算するなど、注文から納品まで一貫したサービスを開発しています。

3. LogiNext
2014年に設立されたLogiNextは、フリート管理の最適化、配達ドライバー用のアプリ、顧客用の配達状況追跡アプリ、荷主向けの運送業者選定・割り当て、ERPとの連携など、非常に多岐にわたるサービスを総合的に提供しています。企業はLogiNextのフリート管理機能を活用することによって、配送ドライバーの稼働状況を把握できるようになります。また、突発的な注文に対し、ドライバーの自動割り当てが可能なため、ドライバーを効率的に管理して配送コストを下げ、ドライバー不足の問題を解消します。
自動注文割り当ては返品物流にも使用されています。注文管理システムと統合すると、同じ顧客や同じ場所からの注文を1回の集荷にまとめることができますし、差し迫った集荷をリアルタイムに通知してくれるため、集荷の優先度もアシストしてくれます。ドライバーの位置を把握するだけでもかなりの効率化が期待できます。

4. Shipsy
Shipsyは、国内物流と国際物流の両方に対して非常に多くの機能を搭載したSaaSを提供しています。このサービスは輸送業務のデジタル化をすることで、ファーストマイル、ミドルマイル、ラストマイルのオペレーションを完全に可視化できるといいます。
ファーストマイル(ファーストワンマイル)… 製品を倉庫から出荷する最初の1マイルのこと。製品の梱包、積み込み、運搬など。
ミドルマイル… 流通センターや配送センターを繋ぐ中間物流
ラストマイル(ラストワンマイル)… 最終拠点からエンドユーザーへの物流
Shipsyが提供するプロダクトはいわゆる陸運単体にとどまらず、小売り、海運、製造業、クイックサービスレストラン(ハンバーガーチェーンなど)、宅配便などあらゆる業界・用途に役立ちますが、物流にフォーカスするならば50以上の配送会社との統合を実現しており「見積書の共有」「出荷の追跡」「出荷書類の管理」「請求書の照合」などができます。
このサービスの面白いところは、業者間でShipsyという共通のシステムを導入させていることです。業者によって異なるシステムを使用していると、各々のシステムからデータを確認し、自社のシステムに転記するといった、情報の交換にコストがかかります。この業務が自動化されることで、業務効率化が期待できるでしょう。

5. Loop
Loopはサプライチェーン全体に対し、見積もりを超過した請求の妥当性に対する監査業務や、支払い業務を自動化するAIスタートアップです。Loopは様々な機能を提供していますが、特筆すべきは請求書の過払いを避けることを自動化したことです。荷主と運送業者の間で交わされた見積書の通りに運送できれば良いのですが、実際には悪天候による燃料消費や稼働時間の超過により、請求金額が見積当初よりもかさんでしまう場合があります。従来であれば見積とは異なる金額提示をされたときに、それが正しいものなのかを監査するための監査人を雇う必要がありましたが、Loopは運送業者のコミュニケーションややり取りを全て記録としてとり、請求書の内容が確かかを自動で判定する仕組みを持っています。これにより監査人のコストが不要となり、大幅なコスト削減を実現できます。
複数のシステムで、複数の文書を荷物ごとに管理していたものをLoopに送信することで、あらゆるテンプレートに対応しているLoopのAIが自動で値をフォーマット化してくれるため、全て一元化された状態で管理することができます。そこから過去のやり取りやデータを分析にかけ、支払い予測を可視化したグラフを生成することで、監査業務の自動化を実現しています。

まとめ
海外のAIスタートアップを見ると、基本的な機能は「ルートの最適化」、「リアルタイムのトラック追跡」、「ドライバーや荷主にとって使いやすい操作性の高いUI」が多いような気がします。ただ、今回は紹介していませんがAIの得意領域である需要予測を行っている企業もありますので、また別の記事で紹介します。こうしたAIを活用したプロダクトに加え、昨今は生成AIの台頭により、既存のサービスにはないような新たなユースケースが模索されています。
弊社では、生成AIを活用した法人向けシステムの構築やコンサルティングサービスを提供しています。生成AIを用いて「こういう使い方はできないか」といった相談があれば、お気軽に問い合わせいただけると幸いです。
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