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【物流DX】生成AIでトラックの積載率を向上させる方法

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生成AIを活用し、トラックの積載率を向上させる方法を考察しました。

物流業界の課題としてよく取り上げられるものの1つに、積載率の低さが挙げられます。積載率とは、輸送効率を表す指標の1つで、「トラックの最大積載重量に対して、実際に積載した貨物の重量の比率のこと」を指します。

実態として積載率の平均は40%と言われており、荷物の種類によって同じトラックに乗せられないというルールや、納期の関係から低い積載率で稼働せざるを得ないなど、様々な要因が絡み合っており改善されづらいというのが実情です。しかし仮に積載率の改善ができたとしたら、従来より少ないトラック台数でより多くの荷物を運ぶことができるため、1台のトラックを稼働させるコストは同じでも、売上が大きくなります。そこで今回は生成AIを活用して、積載率を向上させられないか考察してみました。

既存のAIを用いた積載率改善のソリューション

積載率の向上を考察するにあたり既存の取り組みを調査していたところ、豊田合成会社のソリューションを発見しました。

AIを活用したトラックの積載率向上で物流時のCO2排出量を低減

簡単に要約すると、カメラでトラック内の撮影を行い、AIの画像解析を用いてトラック内の積載量を算出することで、積載率の低い路線や便を抽出する、というものです。従来は、各運行路線の担当者が目視確認をして積載量を算出していたため、担当者の経験年数による判断のばらつきや確認できるトラック台数に限界がありました。一方でAIの画像解析であれば24時間撮影ができますし、正確な積載量が算出できます。これにより、見込みでは年間4,400便の運行本数の削減が可能となり、140トンのCO2削減につながるとのことです。

これ自体は環境改善や配送コストの削減につながる、意義のある取り組みだと思います。ここからさらに高度なオペレーションを構築するために生成AIを活用すると、より業務を自動化した形で積載率の向上が見込める可能性があります。以下の章では、筆者なりの考察を紹介します。

生成AIを用いた積載率向上の考察

豊田合成会社のアプローチは、「積載率の低い便を抽出するところまでをAIが担う」というものです。そこから先の荷物の移動や構成は手動で行う必要があります。一方で生成AIを用いたアプローチでは「積載率の低い便が出てこないように、積載率が高くなるような荷物の構成をAIに算出させる」というやり方が可能なのではないかと考えています。

具体的な手順としては、以下の2つです。

  1. 「GPT-4V」のようなマルチモーダルなモデルから、画像から得られる情報を自然言語として抽出する
  2. 生成AIの持つ推論能力を活用し、自然言語から意味的情報を理解させ、そこから荷物の構成を算出させる

まず 1 の自然言語の抽出に関してですが、GPT-4Vというモデルは画像をアップロードすると、その画像に何が書かれているかをテキストで説明してくれるというものです。GPT-4VはChatGPT上で使用できるものですが、ChatGPTは社内情報が学習されてしまうというセキュリティ上の問題から、業務での利用を許可していない企業が多いです。現在は「LLaVA-1.5」という、GPT-4Vのオープンソース版であり「Llama2(Facebookが作っている大規模言語モデル)」をベースとしたモデルがあります。こちらを使用して社内システムを構築すると、画像からテキスト情報を抽出することができます。

次に 2 の、「自然言語から意味的情報を理解させる」という部分ですが、こちらは生成AIが持つ推論能力を活用しています。生成AIの推論能力とは、取得した情報から、それが何を意味するかを論理的に考えさせることです。例えば、荷物に貼られているラベルから荷物の種類を判断する場合、通常のOCR技術(画像やPDFからテキスト情報を抽出する技術)を利用すれば「001」というテキストを抽出すること自体はできます。しかし、「001」という文字が「農水産品(仮)」の荷物であるという意味を持っていた場合、これを推論することはできません。生成AIであればプロンプト(生成AIに与える指示文)やFew-Shot(事例をあらかじめ提供しておくこと)により、テキスト情報と意味的情報を関連づけたものとして処理することができます。

また、荷物のラベルにサイズが記載されているか、荷物のサイズがある程度規格化されていて画像から把握できる状態であれば、荷物の占める容積もデータとして保持することができます。同じトラックには乗せられない荷物の種類なども、プロンプトの設定として生成AIに学習させておくことができます。これらの荷物情報やサイズを、物流センターで荷下ろしする際に荷主側から提供できれば、トラックに積み込む前に積載率が高くなるような荷物の構成を計算させることができるはずです。実際にはもう少し多くの変数を考慮しなければならないかもしれませんが、これだけでも研究開発として取り組む意義はあるかと思います。

まとめ

生成AIには積載率の低いものを抽出するアプローチではなく、積載率が最も高くなるような組み合わせを推論できる可能性が高い、という考察をしました。組み合わせが完璧に算出できるとまではいかなくとも、あくまで人間のサポートを行う補助機能として活用することで、経験の少ない人でも一定の積載率が担保されるようになれば、意味のある取り組みになるのではないでしょうか。

弊社は生成AIの分野において、大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。そのため、それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援を行っております。また、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も大歓迎ですので、お気軽にお問い合わせください。

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