物流の書類管理に対する生成AIの活用方法
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物流の書類作成や管理にかかる工数は膨大です。生成AIを用いて書類の管理をどのように効率化・自動化できるかを解説します。

生成AIの活用方法として最も一般的なものはチャットボットの開発ですが、書類の作成・管理・変換とも非常に相性が良いと考えられます。今回は物流の業務の中で登場する書類と、それに対する生成AIの活用方法を紹介していきたいと思います。
そもそも生成AIの価値はなにか
物流の書類管理と生成AIの活用方法を紹介する前に、そもそも生成AIが持つ価値はなにかを考察してみたいと思います。
人によって生成AIが持つ価値はさまざまだと思いますが、その中でも大きな価値の1つとして、「データの統合を自動化すること」が挙げられると私は考えています。それにはまずデータの抽出を正確に行う必要があり、この業務は従来使用していたシステムから取得するか、PDFやExcelの書類であればOCRという技術でテキストを取得する必要があります。そして抽出したデータを、プロンプト(生成AIへの指示文)を用いて1つのデータフォーマットに統合することができれば、複数のシステム上で動いていた個別のデータを一元化することができます。(実際にはもう少し技術的に難易度の高いプロセスを踏む必要がある場合がほとんど)
これは物流に限らない話ですが、多くのステークホルダーが複雑に関わりあっていて尚且つ、各々のステークホルダーが個別のシステムでデータを管理しているとなれば、情報の伝達やフォーマットの加工に時間がかかると思われます。物流業界で考えると、大手企業であればERPや輸送管理システム(TMS, Transportation Management System)、倉庫管理システム(WMS, Warehouse Management System)といったシステムが導入されていると思います。これらのシステム内の、非構造や半構造化されているようなデータの統合ができるようになれば、取引相手とのデータ転送が自動化できるはずです。
運送委託契約時の発注書の受付
現状として、荷主はメールや電話、メッセージアプリなどで運送業者に荷物の見積もりを依頼しているか、または運送業者が荷主のシステムにログインして注文情報を取得し、そのデータを運送業者が使っているシステムに転記しています。1日数千件やり取りされる荷物に対し、毎回この業務が発生するとなると、合計で何十時間もかかってしまいます。生成AIをこの業務にうまく適用させることができれば、どのような形式であっても積載データを抽出し、それを運送業者側のシステムに合う形に加工してデータ受信することが可能です。
輸送完了後の請求書の管理
仮にある物流会社が、数十以上の取引先を持っている場合、請求書をやり取りする件数は非常に多くなります。また、基本料金+αのオプションが膨大にあることから、業務効率の低下や人力によるミスが起こりやすいでしょう。そもそも紙の請求書を使っている場合も珍しくないかもしれません。理想としては、まず請求書の管理をデジタル化することや、CRM(Customer Relationship Management)・販売管理システムと連携しておいて効率的に請求書を発行・受領できるようにしておく状態が良いでしょう。
生成AIは販売管理システムと請求書発行システムの統合ができるようにデータ連携を行い、一つのフォーマットでデータを管理することが可能です。全社的にDXに力を入れ、複数のSaaSやシステムを導入すること自体は意義のある取り組みですが、データが分散されていると、逆に管理コストが嵩んでしまう危険性があります。データの統合が自動で行われるようになれば、システムの使い手にとって利便性の高い体験を提供できるでしょう。
荷主や3PL業者とのメールのやり取り
メールの作成は物流に限らず生成AIの活用方法として取り上げられていますが、物流業務に最適化するとなると、運送業者への運送委託時に使用する場合など、決められたフォーマットのメールをすぐに出せるようにしておいたり、業者間で入力すべき内容をあらかじめ学習させたりと、一定のテンプレート化が必要になるでしょう。私自身も、メール作成に割かれる時間が多いです。生成AIの導入を、社外とのメッセージのやり取りに使用できない場合は、まずは社内で導入してみるのも有意義な取り組みです。メールのような、PDFやExcelなどのファイル形式を持たない、文字列のみで構成されたテキスト情報は、生成AIが最も抽出・加工しやすい情報です。メールに記載された情報を抽出し、相手や自社のシステムに反映させることも可能です。
書類管理に生成AIを用いると何が嬉しいのか
物流の業務において書類の管理は、売上に直結するような業務ではなく、オペレーションを回す上で必要になってくる作業です。本質的でない業務を自動化することで、人間が荷物を運ぶなどの、本来集中すべき業務に集中することができます。書類に係る業務を生成AIが自動化することの利点は大きく2つです。
1つは、オペレーションのスピードが上がることです。回転率が上がることによって、同じ時間であってもより多くの輸送・配送が可能になり、案件を多く捌くことができます。そういう意味では、売上を伸ばすための効率化とも言えるでしょう。
もう1つは、人件費の削減です。自動化する前の業務に人が介在しているのであれば、人件費というコストを削減できます。逆にいうと、自動化する業務にもともと人手がかかっていないのであれば、あまり自動化する意味はありません。
まとめ
生成AIは自然言語を中心に扱うだけあり、書類の管理やテキスト情報のやり取りに対して相性が良いということがわかりました。物流業務には、積載率の低さ(トラックの最大積載重量に対して、実際に積み込んだ貨物の重量の比率が低い状態で運行している)や実質稼働時間の短さ(待ち時間が多く、ドライバーの勤務時間に対して荷物を運んでいる時間が短いこと)など、より多くの課題が眠っています。こうした課題は既存のAIやビッグデータによる予測により改善されると同時に、生成AIにデータの分析を行わせるといった使用法もあるでしょう。また、メール送信業務に対して自由にフォーマットを設定できるのであれば、営業やリード獲得など、売上に直結する業務に生成AIを活用することも可能です。
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