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デュー・ディリジェンスやESG調査の時間を大幅短縮する生成AI SaaS:Auquan

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企業のデュー・ディリジェンスやESG調査に生成AIを活用している海外スタートアップを紹介!

昨今、生成AIに注目が集まる中、金融機関でも業務への活用に向けて様々なユースケースの探索が行われています。

金融業界の業務は、対顧客の業務としてはコールセンターやカスタマーサポート、KYC(Know Your Customer:顧客の本人確認)、貸出審査などが挙げられ、社内業務では稟議書や分析レポートなど、大量のドキュメントを扱う業務が存在します。さらにM&Aや投資の文脈では、企業のデュー・ディリジェンスやリスクアセスメントにおいても情報の収集・分析の業務が存在します。

顧客対応はチャットボットによる自動応答、社内ドキュメント作成はテキスト生成等、これらの業務には生成AIのポテンシャルを生かすことができそうですが、実際に実務レベルで使用できるようなツールやユースケースは、まだまだ多く見られないのが現状ではないでしょうか。

そこで今回は、Auquanという海外のスタートアップの事例から、生成AIが金融業務をどのように効率化するのかを紹介していきます。

Auquanが解決する課題

Auquanは、企業のデュー・ディリジェンス・リスクアセスメント・ESG評価等を行う際に必要となる情報収集や分析を、自動化するソフトウェアサービスを提供しています。

主要な顧客として、すでにUBSやFederated Hermeなどの大手金融機関がサービスを導入しているという実績があります。2023年10月中旬には、シードラウンドで350万ドル(約5億円)の資金調達を行いました。

Auquan Raises $3.5M to Accelerate Generative AI for Financial Services, Turning Unstructured Data Into Intelligence

投資銀行・プライベートエクイティファンド・資産運用会社等の金融機関は、投資の意思決定やM&Aにおけるシナジー調査のために、調査対象となる企業の貸借対照表や損益計算書、規制文書、10-k(米国において提出が求められる年次業績報告書)や10-q(四半期業績報告書。10-kと同様に米国において提出が求められる)、ニュース報道の内容等、膨大な情報を収集しています。

担当者は、上記のような情報を元に、分析レポートや報告資料を作成する必要があります。例えばデュー・ディリジェンスを行う場合、集めた情報から法務・財務・人事・ビジネスモデルなど、複数の観点から分析することが求められるので、レポートの作成には最低でも数日以上かかってしまうケースが少なくありません。

調査対象先の企業規模が大きくなってくると、もちろん数日では終わらず、数週間〜数ヶ月かかる場合もあります。こういったディールは水物なので、できる限り早くデュー・ディリジェンスが行われる方が好ましいものの、一方で重大リスクを見落としたまま検討が進んでしまうのも避けた方が良く、スピードと精度の両立が非常に難しくなります。

たった1つの契約書の、たった1つの条項の見落としが、M&Aや投資後に重大リスクとして顕在化するケースは数多く報告されています。

また、開示書類のフォーマットが顧客ごとにバラついていることも、同タスクを複雑にしている原因の1つです。企業Aと企業Bでは、財務資料に記載されている項目は異なるケースが多く、契約書や借入明細のフォーマットもバラバラです。

Auquanのソリューション

Auquanは、投資対象企業の事前スクリーニングやデュー・ディリジェンス、ESG関連のリスク調査に必要な情報をスピーディに収集できる、 「Auquan Intelligence Engine」というSaaSを提供しています。


詳細のデモが発表されているわけではありませんが、Auquanが作成しているブログ記事のトップページでは、一連の操作を行っている部分的な動画が公開されています。

Auquan Launches Prompt Intelligence to Deliver Real-Time Insights on Any Company at Any Time



ユーザーが任意の企業名を入力して選択すると、Auquan独自のデータベースにある対象企業の概要を見ることができます。また、並行してLLM(大規模言語モデル)によってインターネット上の情報が自動的に収集され、企業ホームページの内容やニュース記事、公開されている財務情報などを取得する様子がリアルタイムで反映されます。

デモ動画の画面では、ESG評価を行うモードが選択されているため、ESG評価に関連する情報のみがフィルターされた状態で表示され、取得した記事や財務情報のそれぞれに対し、ESGの観点で評価をしてくれるようになっています。

おそらく、ユーザーはタスクに応じてモードを変更することができ、デュー・ディリジェンスを行うモードや、レポート作成に適したモードを選択することができるようになると考えられます。生成AIは、情報収集・分析はもちろんですが、収集した情報をユーザーの求める言語に翻訳した状態で回答を生成できる点も、業務の効率化に大きく貢献しています。

RAG(Retrieval Augmented Generation)の活用

一般的に、LLMはある時点で学習がストップしているケースがほとんどです。ChatGPTも2022年末にリリースされた当時、2021年9月までの情報しか学習しておらず、アクセスできる情報が古いという声が多数挙がりました。

Auquan Intelligence Engineが、最新の情報へのアクセスを担保しながら企業の情報収集や分析ができるのは、RAG(Retrieval Augmented Generation)という手法が使用されているためです。


RAGは、LLM(大規模言語モデル)が質問に対する回答を直接生成するのではなく、特定の情報や専門知識をベクトル化したベクトルデータベースを作成し、LLMがベクトルデータベースを参照した情報から回答を生成します。


RAGは、ベクトルデータベースに知識を埋め込むため、そこで情報の管理を行うことが可能です。また、情報の更新や削除が容易にできるようになるため、情報のリアルタイム性を担保することもできます。Auquanは収集した情報をベクトルデータベースとして保管しておくことで、デュー・ディリジェンスやESG評価などの業務に必要な分析を、短時間で実現しています。

まとめ

Auquanは、RAGという技術を用いることで、企業のデュー・ディリジェンスやESG評価に必要な情報を、数十秒という短時間で収集・分析することを可能にしていることがわかりました。

RAGという技術は、エンタープライズが生成AIを業務に活用する上で欠かせない技術であると考えています。弊社もRAGを専門としており、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。

弊社では、RAGを活用したプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。

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