営業担当者のための生成AI Copilot:GTM Buddy
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営業担当者がセールスを行う中で、成約確率の高いコンテンツを適切に提供できるサービス、GTM Buddyを解説!
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営業は、属人性の高い業務の1つと言えるでしょう。というのも、顧客とやりとりするメールの内容1つとっても、営業担当者ごとにスタイルは異なるためです。
商談でどのような資料を見せるか、あるいは同じ資料を見せてもどのようなストーリーで提案を行うか、担当者ごとにそれぞれのやり方が存在します。こういった課題は、昔から現在に至るまで普遍的に存在しており、営業のクオリティを底上げするツールには、引き続き高いニーズがあります。CRMソフト(Customer Relationship Management:顧客関係管理)はそんなツールの1つです。CRMソフトを使って顧客情報を可視化し、各見込み顧客との商談記録を分析することで、営業担当者は顧客の要望にうまく応えることのできるアクションをとりやすくなります。
生成AIの登場以降、CRMソフトに変化が生まれ始めています。生成AIを組み込むことで、従来の一般的なCRMソフトでは難しかったような、ハイレベルの営業アシストが実現されています。
今回は、営業活動に必要なコンテンツとCRMソフトを紐付け、生成AIをハイレベルな営業ガイドとして活用できるソフトウェアを提供する、GTM Boddyという会社を紹介します。
GTM Buddyの概要
GTM Buddy(米国・ノースカロライナ州)は2020年に創業した、AI営業ガイドをサービス展開するスタートアップです。
この会社は元々、従来のSales Enablement(営業組織が継続的に成果を上げていくために行われる、人材の育成・改善に向けた取り組み)ツールに対する不満から、プロダクトの開発をスタートしています。
そのため生成AIを活用した営業ガイドだけではなく、個々の営業人材にパーソナライズした形で、社内トレーニングの資料をレコメンドする機能なども提供しています。
GTM Buddyは2023年12月初旬に、シリーズAラウンドで650万ドル(約9.2億円)の資金調達を行いました。2021年2月に、シードラウンドで200万ドル(約2.8億円)の資金調達を行って以来、2度目の資金調達です。今回の資金調達は、生成AIによる営業ガイドの機能を、より拡充していくための資金調達であると思われます。
従来の営業活動における課題
冒頭で、属人性の高い営業業務において、CRソフトが商談記録から顧客要望に合った施策の実施に役立ってきた、とご紹介しました。
CRMソフトで管理できる情報は、見込み顧客の業態、会社規模、担当者の役職、リード獲得チャネル、商談記録などの情報ですが、顧客と営業担当者の間で行われたコミュニケーションに含まれるデータまで活かせるソフトはほぼありません。
例えば、「メールで見込み顧客とやりとりしている際、特定のトピックに対して先方の反応がよかった」という情報は重要な営業情報となりますが、担当者がいちいち細かくメモを残しておかないとデータとしては蓄積されません。こういった作業は手間がかかることや言語化が難しいこと等が影響し、意外と実施されていないのではないでしょうか。
結果的に、商談記録からどのような商品を提案するか、どのようなストーリーで訴求するかについては、営業担当者個人やチームメンバーの感覚に依存し、データに基づいた意思決定がしづらくなるという傾向があります。
また、多くのCRMソフトは社内の営業コンテンツと連動していません。ここでいうコンテンツとは、自社が保有している製品カタログや提案資料、ホワイトペーパーや他社事例をまとめた資料などを指します。それぞれのコンテンツを、見込み顧客の会社規模、業態、担当者の役職などの特徴に応じて最適化することは、効果的な営業に必要な準備であることは事実ですが、を人手でやろうとすると相当の時間と手間がかかってしまいます。
クラウドを利用している企業の場合、一般的に営業コンテンツはGoogle DriveやMicrosoftのSharePoint、あるいは何かしらのCMS(Contents Management System:Web上に公開している自社の記事や画像などのコンテンツを管理するツール。WordPressなどが代表例)上で管理されていることが多いと思います。
上記のようなコンテンツ管理方法の場合にユーザーを手間取らせるタスクの1つに、「ファイル検索」が挙げられます。無数のファイルから希望のファイルを取り出すためには、ファイル名に含まれる単語を検索しなくてはなりませんが、どのコンテンツにどのようなファイル名が付けられたか、を全て記憶しておくのは至難の業です。
営業資料やホワイトペーパーのファイル名は、必ずしもその資料の内容を適切に要約した命名がなされているわけではありませんし、資料の内容に沿ったファイル命名の選択肢は複数あるにも関わらず、一つのファイル名しか付けられない、という制約があります。
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また、基本的に検索した単語と部分一致するファイル名が検索結果になるため、その資料に記載されている内容も検索対象に含める、ということはできません。
CMSのタグ付けについても同様のことが言えます。多くのCMSにはタグ付け機能があり、コンテンツがどのカテゴリに含まれるかを判断できます。一方、現状は手動でタグを作成し、その紐付けも人間の手によって行われるため、営業を行う時に、欲しいコンテンツを取得できるようなタグ名になっているかや、タグとコンテンツの紐付けが適切であるかどうかが判断できません。
その結果、
- ファイル名やタグ名の命名が適切であるかが担保されていない
- 顧客の課題や要望に対し、適切な内容が記載されたコンテンツを検索できるかどうかは、営業マンの検索能力やその会社における実務歴に依存する
- 見込み顧客に展開したコンテンツが、それぞれの見込み顧客の状況に沿ったものになっているかどうかや、成約に寄与したかどうかが計測できない
といった課題が生じます。
社内コンテンツとファイル命名の依存・制約、検索の課題については、下記の記事で詳しく解説されています。
Transforming revenue enablement with contextual search, AI and more
実際の営業現場では、個々の営業担当者のノルマ達成 / 未達ばかりがフォーカスされることが多いこともあり、前述のような「正しいコンテンツを正しい文脈で見込み顧客に提供できていないかもしれない」という課題は顕在化しづらく、組織自体がそもそも課題として認識していないことが少なくありません。
コンテンツとCRMの統合による、営業ガイド
GTM Buddyでは、資料やホワイトペーパーなどのコンテンツをアップロードすると、各コンテンツに記載されている内容を生成AIが読み取り、自動でタグ付けを行います。このタグ付けは、ユーザーが見込み顧客と会話をする中での文脈や、課題の背景・状況(以下、コンテキストと呼ぶ)を踏まえた上で、タイムリーなコンテンツを取得・提案できるような形でコンテンツとの紐付けがなされます。
これによりGTM Buddyは、顧客のステータスや会話の流れに合わせて、最も適していると思われるコンテンツを提案することを可能にしています。Google Calendarと連携し、会議の設定時に展開すべき資料をサジェストすることもできるようになっています。
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それだけでなく、展開したコンテンツに対する顧客の反応や、成約したかどうかなどの情報をフィードバックされたデータとして収集することで、そのコンテンツがどういった顧客の特性や状況の顧客に対して刺さりやすいかがわかるようになります。
「コンテンツの提案 → 顧客の反応からフィードバックを得る」というプロセスを何度も繰り返すことになるので、生成AIが学習できるデータセットがどんどん蓄積していき、コンテンツの提案精度が向上していきます。
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Salesforceなど既存のCRMソフトからデータを取得し統合することや、Outlookとの統合も可能であるため、既に使用しているCRMソフトやメールはそのままに、情報の分析のみをGTM Buddyに行わせることも可能です。
コンテキストの理解により、GTM Buddyができること
GTM Buddyは、コンテンツとCRMの統合を可能にするために、コンテキストの理解ができるような、営業活動に特化したドメイン固有の言語モデルを開発しています。コンテキストの理解により、その他にも多くの機能を提供しています。
1. FAQs
見込み顧客との会話情報をOutlook、Slack、Teamsなどから取得し、継続的に蓄積することで、顧客からのよくある質問を抽出し、それに対する回答を作成できます。この機能は、メールの返信をする時などに、FAQを見ながら文面の作成ができるので、営業担当者は作業をしながらGTM Buddyのサポートを受けることができます。
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2. 類似した他社事例の抽出
営業マンが自社の製品を紹介する際に、「有名なあの大企業が使用してくれています」とアピールすることで、社会的な信頼性や権威性を表現することがあると思います。
大企業が使用しているという訴求は、それはそれで効果的なのですが、見込み顧客が求めている他社事例は、「自分たちと同じ業態や同等の会社規模、似た取り組みなどをしている企業が、営業マンが紹介する製品の導入によって、どのように効果を発揮したか」という事例ではないでしょうか。
GTM Buddyはコンテキストの理解により、新規の見込み顧客に対して、業態や会社規模だけでなく、似たような課題・悩みを持っていた企業の情報を抽出してくることができます。
3. 競合分析に関わる資料やWeb記事の検索
見込み顧客の業態や状況によって、自社の競合製品が異なってくるケースがあります。GTM Buddyは、顧客の要望や業態・課題をコンテキストとして理解し、自社の競合となる製品をピックアップすることが可能です。さらに、競合製品との比較資料があればその資料を提案することもできますし、Web上の比較記事も提示してくれます。
これにより、ある見込み顧客に対する競合製品は何か、競合製品と比較した強みと弱みは何か、価格面での優位性はどうか、などを分析した上で、商談時における提案内容を工夫したり、質問に対する返信内容を作成したりすることができます。
その他にも、顧客からの質問に対する回答やメールの返信を、チャットボットから回答させる機能が搭載されています。下記は、顧客からの質問に対し、自社製品の知識を学習した大規模言語モデルが適切な回答をしている画像です。自分で回答を考えずとも、メールやチャットで受けた質問をそのまま連携することで、回答を得ることができます。
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まとめ
GTM Buddyは、営業活動における顧客のコンテキストを理解することで、顧客状況に応じた資料・返信の提案や、資料が成約に寄与したかどうかの測定を可能にしていることがわかりました。
弊社でも、セールス業務を効率化・自動化するツールの開発を行っております。また弊社は、大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。
それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。
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