【訴訟 × 生成AI】弁護士のために潜在的な訴訟を検知する生成AI サービス:Darrow
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潜在的な訴訟を見つけ、弁護士事務所と原告とのマッチングもできる生成AI サービス「Darrow」を徹底解説。
集団訴訟は、同様の被害を受けた複数の人々が共通の訴えを持つことから成り立っています。
しかし法律事務所が集団訴訟の案件を進める際は、こうした訴えから訴訟の根拠となるような情報を特定しなければならず、企業の公開情報を広範囲に収集・分析する必要があるため、この作業に少なくとも数日は時間を要しています。
また、訴訟の根拠となる情報を特定することができたとしても、それらが全て根拠として出揃っているかどうかを人力で判断することは、ほぼ不可能に近いです。
今回は、生成AIを活用して企業の公開情報を収集し、集団訴訟における要求から潜在的な訴訟となる根拠を洗い出す生成AIサービス「Darrow」を紹介します。
Darrowの概要
Darrowはイスラエルに拠点を置く、2020年に設立されたリーカルテックのスタートアップです。
同社は、CEOのEvyatar Ben Artzi氏(以下、アルツィ氏)とCTOのGila Hayat氏(以下、ハヤット氏)、現在は同社にいないElad Spiegelman氏(以下、シュピーゲルマン氏)によって設立されました。
アルツィ氏とシュピーゲルマン氏はエルサレムのヘブライ大学ロースクールで出会い、卒業後2人はイスラエルの最高裁判所の法廷で共に書記を努めていました。
また、CTOのハヤット氏はイスラエル国防軍の諜報部隊である8200部隊(サイバーセキュリティ分野でCheck Point Software Technologies や Palo Alto Networks、CyberArk などのユニコーン企業創設者や、ホームページ作成ツール Wixの創業者を輩出している)で、シニアソフトウェアエンジニアおよびチームリーダーを務めていました。
CEOのアルツィ氏は、
「毎日、膨大な数の個人に影響を与える無数の法的違反が見過ごされていますが、これらの違反の背後にある証拠や潜在的なケースを支持する法的理論は広く利用可能です。
弁護士がこの果てしない量のデータを解析することは人間には不可能です。そこで、Darrowのプラットフォームがこのプロセスの重要な部分をリードし、法律事務所がビジネスを成長させながら、彼らがサービスを提供する人々に対する影響を最大化するのを助けます。」
と述べています。(引用:https://www.calcalistech.com/ctechnews/article/rkeopxvkt )
企業の法的違反は公的文書や公開情報から読み取れる分だけでも相当な数がある一方で、そのほとんどは見過ごされていることが指摘されており、生成AIがそれらの潜在的な訴訟となりうる材料を検索・取得してくることに役立つことが主張されています。
Darrowはそうした課題を解決する生成AIサービスであり、2023年9月にはシリーズBラウンドで3,500万ドル(約52.5億円)を調達しています。この資金調達により累計資金調達額は5,400万ドル(約80億円)に達し、創業から3年半で急速に成長しています。
Darrowの機能
Darrowのサービスページでは端的に、下記の文章でDarrowの提供する機能が説明されています。
「Darrow は、消費者からの苦情や行政文書、SEC(Securities and Exchange Commission:証券取引委員会) への提出書類などの公開されている情報を精査し、関連するデータポイントを結び付けて法律違反を検出して財務上の影響を評価することで、訴訟チームのビジネス開発を合理化します。」
Darrowは、Scan(スキャンする)、Detect(検出する)、Deliver(届ける)の3ステップで機能を提供します。
Scan(スキャンする)
(引用:https://www.darrow.ai/how-it-works/ )
はじめに、SNS・報道機関のニュース・財務情報・訴訟情報源・学術論文・行政文書などの、Web上から収集できるあらゆるデータを収集します。
Detect(検出する)
(引用:https://www.darrow.ai/how-it-works/ )
スキャンしたデータはそれぞれ別のチャネルから収集したものですが、自然言語処理を行うことで、同じ話題について話している部分(上記画像のデータポイントと呼ばれている箇所)を関連情報として抽出することができます。
これにより、潜在的な訴訟になりうるような法律違反を検出することが可能です。
Deliver(届ける)
(引用:https://www.darrow.ai/how-it-works/ )
検出された法律違反は、ユーザーがなぜ法律違反にあたるかを理解するためのレポートとしてまとめられます。
加えて、このケースで訴訟を行った場合、法律事務所にとってどれだけの経済的価値を生むか(得られる賠償金がいくらに相当するか)や、訴訟に勝利する確率などの予測データを閲覧することができます。
またDarrowは、上記3ステップで提供されるコア機能とは別に、「Plaintiff Link」と名付けられている機能を2024年2月にリリースしました。
Plaintiff Link
Plaintiff Linkとは、原告側の訴訟内容を法律事務所が閲覧でき、法律事務所側から原告代表人にコンタクトできる、という機能です。
CEOのアルツィ氏は、法律業界では、訴訟内容を把握した上で原告と法律事務所を適切にマッチングするサービスがこれまでになかったことを指摘しています。
「法律事務所はあまりにも長い間、自らの専門知識と法的代理人を最も必要とする人々との間のギャップを埋めるのに苦労してきました。
PlaintiffLink は、この課題に対する当社のソリューションであり、法律事務所が訴訟の適格な原告と効率的につながるように特別に設計されています。」
(引用:https://www.darrow.ai/plaintiffLink/ )
原告は自らの訴訟内容を入力すると、生成AIがそれらの内容をレビュー・修正提案してくれます。レビューが完了したものから随時、承認申請を行うことができます。
訴訟内容が承認されると、1つのキャンペーンとして訴訟内容が記載された投稿が作成され、法律事務所側が閲覧・連絡できるようになります。原告側はどの法律事務所に依頼するかを比較した上で選ぶことができます。
(引用:https://www.darrow.ai/plaintiffLink/ )
まとめ
Darrowは生成AIを活用し、企業の公開情報を収集・分析することで潜在的な訴訟となり得る法的違反を検出したり、原告と法律事務所をマッチングを行ったりしていることがわかりました。
弊社でも、特定のテーマにおける情報収集や、複数のドキュメントから意味的に近い記述を抽出・比較させるツールを開発しております。
また、私たちは大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。
それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。
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