【製造業 × AI】AIが組み込まれた機械がオーダーメイド精密部品を製造:Daedalus
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AIが搭載された機械で、複数業界の精密部品をまとめて製造できるDaedalusを徹底解説!

製造業の中でも、精密部品の製造におけるサプライチェーンは、細分化されている場合がほとんどです。
長年にわたり業界固有の製品を製造するような企業は、小さな部品を特定の会社に製造してもらい、その部品を組み合わせて製品を組み立てる傾向にあります。こうした方式は通常、昔ながらの製造業者ネットワークに基づいた体制になっています。
また、小さな部品を製造する会社は、1人の職人と数人の社員からなる小企業である場合が一般的です。
このような産業構造では、業者間のコミュニケーションコストが肥大化しやすいです。しかし、こうした課題を解決するために業務のデジタル化を進めようにも、取引先間の全企業に同様のシステムを入れなければならないため、なかなかデジタル化が進みづらいという特徴があります。
今回は、AIを活用して精密部品の製造を自動化・効率化し、複数業界の精密部品を一手に請け負うことができるAIスタートアップ、Daedalusを紹介します。
Daedalusの概要
Daedalusはドイツに拠点を置くスタートアップであり、CEOのJonas Schneider氏は以前、ChatGPTの提供元であるOpenAIのエンジニアとして勤務していました。
こちらの記事によれば、Jonas氏はOpenAIで、今はなきロボット事業の立ち上げをテックリードとして牽引していた際に、Daedalus創業のヒントを得たとあります。
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ルービックキューブを自動で完成させるロボットハンドが故障したので、スペアパーツを入手する必要がありました。しかし、これらの部品を入手するまでに何ヶ月も待たなければならず、なぜスペアパーツを入手するのがこんなに難しいのかと思いました。
そこから精密部品製造の構造全体を、もう少し詳しく見ることにつながりました。
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また、Jonas氏は冒頭に触れたような、精密部品を製造する際に多数の小規模企業が連携する業界構造に対し、以下のような特定の見解を持っています。
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彼らはデジタル化に関してあまり取り組んでいないということです。基本的に彼らは紙とペンで作業することに慣れているだけなので、それを変えるのは難しいのです。
つまり、非常にローテクなメーカーが、これらの非常にハイエンドな製品に最も重要なコンポーネントを供給しているということになります。
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Kings Researchの調査結果によると、世界全体における精密部品の市場規模は、2022年で約1,855億ドルであったのに対し、2030年には約3878億ドルになると予想されており、驚異的なスピードで需要が拡大していくことが期待されています。
Daedalusはこうした業界の課題と需要の拡大に注目し、精密部品製造を行うための機械や工場に AI を組み込み自動化することで、精密部品製造市場のゲームチェンジャーになることを目指しています。
上記の記事でも紹介されていますが、Daedalusは2024年2月初旬に、シリーズAラウンドで2,100万ドル(約31億円)を調達しました。シードラウンドからの累積調達金額は4,000万ドル(約59億円)を超えており、Y Combinator(シリコンバレーに拠点を置く名門アクセラレータ)も投資しているようです。
Daedalusの提供サービス
Daedalusは現在、医療機器・航空宇宙・防衛・半導体などの業界の百万ドル規模の会社から数十億ドル規模の会社まで、100社以上の顧客がいるとのことです。
TechCrunchの記事では、DaedalusのAIがどのように精密部品の製造プロセスを自動化しているかについて、下記のように説明されています。
機械で新しい精密部品の生産が開始されるとき、必要な工具の選定や正確な形状と寸法の設定には、数十のステップと数百の決定が必要になります。
Daedalusのソフトウェアは、1つの「精密部品」が製造された際の意思決定に関するデータを取得し、将来同様の部品が作成される際には、それがどのように作成されるかについての情報を参照できます。
以前製造した部品と比較して、わずかに大きいバルブや追加のフィッティングを備えたバルブは、以前の部品と実質的な構成は同じである可能性が高いため、Daedalusはパターンマッチングを使用して以前の知識を適用し、新しい部品に合わせて効率的に工具や形状・寸法を構成します。

(引用:https://www.daedalus.de/ )
Daedalusのサービスページでは、主に5つの製造機械が紹介されています。

(引用:https://www.daedalus.de/ )
フライス加工
500×500×400mmまでの部品を3軸から5軸まで最新の機械で加工します。
旋盤加工
WFL(WFL Millturn Technologies:完全加工の分野でリーダー的な供給業者)旋盤では、1800 x 520 mmまでの旋盤加工品および旋盤加工/フライス加工品を製造することができます。
材料
一般的なアルミニウム、スチール、ステンレス合金のすべてを提供しています。
表面処理
厳選されたパートナーとの協力により、様々な表面処理とコーティングを提供しています。
品質管理
ブルカーアリコナ(非接触三次元測定機を提供している会社)の光学式KMMにより、厳しい公差もチェックできます。
各機械の詳細な説明については、こちらのページに記載があります。
またDaedalusは、ISO9001という、国際標準化機構による品質マネジメントシステムに関する規格の認証マークを取得しています。
AIを取り入れた工場や機械であっても品質が担保されていることを証明しており、これにより発注側は安心して発注できます。
まとめ
Daedalusは精密部品の製造機械や工場にAIを組み込み、制御・操作できるようにすることで、複数の業界の細かいオーダーからなる精密部品を、効率的に製造できることがわかりました。
弊社は、AIの中でも法人の皆様が生成AIを業務にどう活用するかについて日々研究開発とプロジェクトを進めており、ハードウェアに対し生成AIを組み込むことにも取り組んでおります。
また、私たちは大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。
それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。
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