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【銀行 × 生成AI】データドリブンで金融商品のクロスセルを実現する生成AI Copilot:Bud

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金融商品のクロスセルがデータに基づいてできる生成AI Copilot「Bud」を徹底解説。

銀行は、取引データなどエンドユーザーのファーストパーティデータ(企業が自社で収集したデータ)を膨大に蓄積しています。しかし、長年に渡りそれらのデータ活用に向けた取り組みは、活発ではなかったように思います。

これは、銀行が手数料による収益を基盤とするビジネスモデルを採用しているため、多くのアカウント開設を目指す営業活動に重点を置きがちなことが一因でしょう。

しかし、銀行が持つファーストパーティデータと、エンドユーザーの許可を得たサードパーティデータ(資産状況など)を組み合わせることで、パーソナライズされた情報やリアルタイムの情報を基に、金融商品をクロスセルする機会を効果的に見つけ出すことができます。

今回は、生成AIを活用して顧客の支出管理から資産形成のための商品提案までを行う、Budというサービスを紹介します。


Budの概要

Budは2015年に設立されたフィンテックスタートアップであり、生成AIが注目を浴びる前からAIを使用して顧客データを個人レベルまで詳細に掘り起こし、それぞれの顧客にとって適切な金融商品を提供することを目指してきました。

2022年6月にはシリーズBラウンドで8,000万ドル(約120億円)を調達しており、当時のプレスリリースには

「Budは『乱雑』な取引データを理解し、顧客の財務状況を正確に把握できる能力によって市場との差別化を図ってきた。」

という記載があります。(引用:https://www.thisisbud.com/blog/bud-raises-80m-to-scale-its-transaction-intelligence-apis

出資をしている投資家・企業にはTDR Capital LLPというファンドをはじめ、Goldman SachsやHSBCなどが資金を提供しています。

資金を提供する大手金融機関自体も、このサービスのユーザーとなっています。



Budの機能

Budの提供する機能は大きく3つあり、「Engage」、「Drive」、「Assess」という名称がそれぞれつけられています。

Engageは顧客にパーソナライズされた財務管理機能であり、Driveは生成AIを組み込んだ顧客データ分析とチャットコミュニケーションによる顧客データの取得機能です。Assessは「評価する」という日本語訳の通り、顧客の財務状況を監視したり、収入証明を評価したりする機能です。

1つずつ詳細を解説していきます。

Engage

顧客の取引データは、どういう入出金サイクルがあるか、どのスパンでどういった商品を購入・積立しているかなどの財務パターンを理解するのに役立ちます。

Spending Insights

Bud - Spending Insights機能の画面

(引用:https://www.thisisbud.com/en-gb/engage/use-case/spending-insights

Spending Insightsはその名の通り、支出状況を可視化する機能です。

これにより顧客はそれぞれの口座でどれだけの支出があるか把握できるため、無駄な支出を減らすことができます。

家計簿アプリのような機能ではあるものの、支出管理を適切に行うことは顧客が良い金融習慣を身につけることに繋がるため、資産形成のための第一歩であると同時に、アプリを定期的に開くことによって顧客のエンゲージメントを維持し続けることに寄与します。

また、支出状況が全て可視化されるため、顧客が認識していない取引に対する異議申し立ての数を削減することにも貢献しています。



Money Manangement

Bud - Money Management機能の画面

(引用:https://www.thisisbud.com/en-gb/engage/use-case/money-management

Money Management(資金管理)は、顧客が支出状況を把握したのちに、財務管理能力を改善させるための機能です。

Budは顧客ごとのトランザクションを分析できることが強みであり、顧客の収入・福利厚生・ローン・借金・サブスクリプション状況を全て管理することができます。

分析結果から削減可能なコストをユーザーにサジェストしてくれるため、アプリが自分の財布状況を理解した上でサポートしてくれているような体験を提供することが可能です。

Personalized Engagement

Bud - Personalized Engagement機能の画面

(引用:https://www.thisisbud.com/en-gb/engage/use-case/personalised-engagement

冒頭で触れましたが、金融機関は膨大な顧客データとその取引データが蓄積されている一方で、それらを活用するための分析や機能の搭載が不足している傾向にあります。

Personalized Engagementでは、特定の顧客特性を持つユーザーをターゲットにどういったアクションを行うかという、オーダーメイドのルールを用意することができます。

それらを活用したメッセージやオファー、財務健全性のスコア表示といった機能を提供することで、財務健全性を強化しつつ、ユーザーにとって適切な金融商品を適切なタイミングでオファーすることができます。

MoneyManagementと同様に顧客にとっては、自分の財務状況を理解した上で適切なオファーをしてくれるような体験になるため、顧客満足度とエンゲージを高めることに繋がります。

Drive

Driveは2023年8月より提供開始された、生成AIを組み込んだ機能です。

Insights Engine

Bud - Drive Insights Engineの画面

(引用:https://www.thisisbud.com/en-gb/products/drive

インサイトエンジンは、顧客にパーソナライズされた適切なメッセージを適切なタイミングで行うための、基盤となる検索エンジンのようなものです。

上記画像の中央にある円グラフは、全顧客基盤のうち特定の顧客セグメントに当てはまるユーザー群が何パーセントに該当するか示しています。また画面内からは、後払いを積極的に利用しているが収入が不安定であるために信用スコアが低い、という顧客セグメントであることが読み取れます。

Insights Analysis

Bud - Drive Insights Analyticsの画面

(引用:https://www.thisisbud.com/en-gb/products/drive )

インサイト分析では、生成AIが顧客データの特性やパターンを自動でセグメント分けすることで、各セグメントごとにコンバージョン(成果地点のこと。Budの場合は金融商品の追加成約にあたる)の高い提案ができるようにしています。

従来はこの作業が整備されないまま営業するか、顧客のセグメントを人力で行う必要がありました。この機能によりBudを導入した金融機関は、顧客のセグメント分けという時間がかかる作業をAIに任せ、顧客との商談業務に集中することが可能です。


Drive Copilot

Bud - Drive Copilotの画面

(引用:https://www.thisisbud.com/en-gb/products/drive


Drive Copilotはエンドユーザー向けではなく、Budを導入した金融機関のスタッフ向けに作られたものです。

スタッフは、Insights Engine や Insights Analysis から得た顧客インサイトにリアルタイムでアクセスするため、チャットベースで顧客セグメントと彼らに対する適切なメッセージをCopilotから聞き出すことができます。

Bud - Drive Copilotのチャット画面
Bud - Drive Copilotのチャット画面2

(引用:https://www.thisisbud.com/en-gb/drive/use-case/drive-copilot

上記画像では、

「大きな預金を持っていて、それを他の場所に移す可能性のある顧客を教えてください。」

という質問をすると、

「もちろん、これらの洞察を使って預金を他の場所に移す可能性のある顧客を見つけることができます:

  • 特徴:最近の突然の収入
  • 収入:$80,000以上
  • 預金:過去3ヶ月で$200,000以上」

という回答が返ってきています。

これは、ユーザーとなる金融機関の全顧客基盤データから分析した結果になるため、導入している金融機関によって異なる結果が返ってくることが予想されます。


Assess

Assessは融資の貸し手となる金融機関向けに作られた、個人の取引データ(以下、トランザクション)を分析する機能です。

Bud - Assessの画面

(引用:https://www.thisisbud.com/en-gb/products/assess


上記画像では、John Doeという人物の収支状況を分析した結果が表示されています。

  • 赤いバツマークでは、Debt Collection Payments(債務回収の支払い)が月平均で-131ポンド(収入の6%)あることがわかります。
  • 黄色いアラートマークは Gambling Spend(ギャンプル支出)が月平均 -650ポンド(収入の21%)あることを示しており、顧客がギャンブルに多額の支出をしていることがわかります。
  • 緑の1つ目のチェックマークは、Loan Repayment(ローン返済)が月平均 -607ポンド(収入の23%)あり、ローン返済にもかなりの支出が割かれています。
  • 最後の緑のチェックマークは Income Stability(収入の安定性)になり、過去6ヶ月間収入に変動がないことを示しています。

また画面説明に加えて、Assessには主要な3つの機能が搭載されています。

Income Verification

Income Verificatoinは、上記のような画面を通じて収入証明ができる機能です。

従来は自営業や非正規雇用者の、正確かわからないような収入証明書をレビューする作業が必要でした。Assessを利用すれば、いかなる個人であっても瞬時に正確な収入を把握する事が可能です。

Affordability Assessments

Affordability Assessmentsを直訳すると、「支払能力の評価」となります。

収入証明によって特定の顧客の収支パターンが把握できるため、その人の支払い能力を評価することも可能です。

返済できそうにない人には融資しないことによって、滞納リスクを軽減することができますし、逆に他の金融機関では信用が得られないような、特殊な収入パターンを持つ人々に、データに基づいて融資を決断することも可能になります。

これにより外部の調査機関に信用調査を依頼する手間が省けるため、時間を節約することにも繋がります。

Affordability Monitoring

Affordability Monitoring は支払能力の監視という意味であり、顧客の財務状況をリアルタイムかつ継続的に監視する事ができます。

債務不履行(デフォルト)になる前にそのリスクのある顧客を特定したり、融資できる状態になった顧客に対しすぐにアプローチしたりすることが可能です。



まとめ

Bud は銀行の取引データとエンドユーザーのデータを活用することで、消費者と銀行のどちらに対しても有用な機能を提供しつつ、生成AIを活用しながらそれらのデータを統合することで、適切なタイミングで適切な金融商品や融資を提供することを可能にしています。

私たちは大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、銀行業でも多く扱われるような非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。

それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。

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