マーケティングツールのハブとなる生成AI Copilot:Arcane
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生成AIをどのようにマーケティング業務に活用できるかについて、海外のスタートアップ「Arcane」の事例から解説!

生成AIは広告やキャッチコピーの作成を考えることができるため、広告の作成やセールスライティングへの生成AIの活用は、生成AIが大体的に取り上げられる前から比較的注目されてきた領域の1つです。しかし、業務に広く利用されるような、生成AIを活用した汎用的なマーケティングツールは、これといったものが思い浮かばないのではないでしょうか。
今回は、生成AIを活用したマーケティングツールを開発している、ロンドン発のArcaneというスタートアップを海外の事例として、彼らが生成AIをどのようにマーケティング業務に活用しているのかを紹介します。
Accelから大型資金調達を行ったArcane
Arcaneは12月半ばに、シードラウンドで500万ドル(約7,200万円)の資金調達を行いました(執筆時2023/12/19)。
この投資には、Facebook, Slack, Dropboxなど、数々のユニコーンを輩出しているベンチャーキャピタルである Accel が主導となり、多数のVCが関わっています。さらにエンジェル投資家として、Metaの製品担当副社長である Connor Hayes氏や、WeWorkの元社長 Anthony Yazbec氏などが資金提供を行っています。
生成AIを組み込んだマーケティングツール
資金調達のニュースを公開するとともに、Arcaneはベータ版となるサービスの紹介ページを開設しました。
Arcane : THE AI COPILOT FOR MODERN MARKETERS
上記のページを開くと、Arcaneを表すキャッチコピーとして「モダンマーケターのためのAI Copilot」という表現が使われています。AI Copilotというだけあり、多くの機能が紹介されていますが、主な機能は下記の3つです。
- 複数媒体における広告配信状況の一括管理
- レポート作成や支出分析の自動化とスケジュール化
- 他社の広告配信状況の分析による競合調査
複数媒体における広告配信状況の一括管理
従来は、GoogleやYouTubeの広告はGoogle広告に、FacebookやInstagramの広告運用はMetaの管理画面に、TikTokはByteDanceの管理画面に、とそれぞれの管理画面にログインして配信設定や数値分析、予算調整などを行っていました。
Arcaneを利用することの利点の1つとして、それぞれの媒体の管理画面情報をArcaneに繋ぎ込むことで、一括で配信状況を管理することができます。例えば、「今TikTokで配信している広告キャンペーンを教えて」と質問すると、TikTokの管理画面から配信しているキャンペーンの情報を参照し、回答してくれます。続いての質問で、「そのキャンペーンから配信状況を分析し、レポートを作成して」と質問すると、瞬時にレポートを作成してもらうことも可能です。
また、運用という面で見ると、最もパフォーマンスが良いキャンペーンをAIアシスタントに教えてもらい、1クリックでそのキャンペーンの予算を増やすこともできるようになります。

レポート作成や支出分析の自動化とスケジュール化
Arcaneには、トップコンテンツレポートや競合他社の広告レポート、広告支出分析などの、レポートの作成機能が搭載されています。これらの機能は、決まった時間に自動で実施されるように設定しておくことが可能です。
広告運用者は管理画面に張り付き、こまめに配信状況をチェックしていることが多いです。1日に数回、決まった時間にレポートが自動で作成されるようにしておけば、広告運用者の手間は格段に削減されるはずです。
支出分析に関しても同様です。広告運用者は常にROAS(かけた広告費に対し、どれだけ売上をあげたか)を意識して運用を行っています。ROASの合わない広告は赤字となるため、早急に見切りをつけて配信停止することが求められます。支出分析によりCV(コンバージョン。商品の購入や問い合わせの申し込みなど、費用対効果を算出するための成約地点のこと)しやすい広告媒体や配信層が把握できるのであれば、配信戦略にもよりますが、そこから外れている層に配信している(支出している)キャンペーンを事前に停止することも可能です。

他社の広告配信状況の分析による競合調査
Arcaneは、同じキーワードやジャンル・カテゴリが同一の商材で広告を回している他社のキャンペーンデータを取得することで、競合がどのような広告(クリエイティブ)を配信しているかを調査することができます。
この機能に関しては詳細な紹介がされていないので、具体的にどのようなインターフェースや機能が提供されるのかについては動向をチェックし、適宜本記事の内容を更新していく予定です。というのも、各媒体でオープンになっている広告についてのみ、トレンドや競合調査ができる機能なのか、管理画面というクローズドな画面で、どのような配信戦略を取っているのかについても調査できる機能なのかでは、得られる情報が大きく異なってくるためです。配信戦略も他社に公開されるということであれば、広告運用者にとっては競合優位性がなくなってしまうため、大きな損害です。競合調査と言っても、どこまでのデータを閲覧できるのかについては重要な論点です。
まとめ
Arcaneというスタートアップは、生成AIを活用して各媒体の広告配信状況を分析したり、競合調査に使えたりするようなマーケティングツールを開発していることがわかりました。これらのアイデアからヒントを受け、レポート分析をより自社の運用に最適化した形で生成AIと連携させることができるかもしれません。
弊社でも業務で活用するデータを学習させたAIアシスタントの開発や、生成AIにデータ分析を行わせるといった試みは実施しております。特に弊社は、大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。
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