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【ヘルスケア × 生成AI】OpenAIも投資する臨床医向けの生成AIサービス:Ambience Healthcare

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臨床医の診断以外の管理業務を自動化する生成AIサービス、「Ambience Healthcare」を徹底解説!

ヘルスケア領域は、生成AIの活用が期待される分野の1つです。

(引用:ヘルスケア領域における生成AI活用事例――医薬品開発、患者対応に高い期待

その中でも臨床医の業務は、問診から診断・コーディング(患者記録から症状・病状をコードとして割り当てる作業)・請求というように、大まかには一連の流れに則った業務です。

従来のアプローチでは、これらの業務は担当が分かれていることもあり、個別業務ごとにそれぞれの効率化がなされてきました。

詳細は後述しますが、業務が独立していることにより診断内容と請求内容に差分が生じ、監査の観点で問題になる場合があります。こうした課題を解決するためには、一連の業務を包括的に管理するシステムが求められます。

また臨床医が患者の診察をしていく中で、別の科での診察やより大きな病院で診察を行う方が適切であることがわかり、紹介状を書くというケースは珍しくありません。

その際の患者情報、診察履歴の引き継ぎをシステムで管理しようとすると、泌尿器科、小児科、精神科など、あらゆる専門領域に対応する必要があるため、患者情報の引き継ぎは紹介状を作成する形になり、フォーマットや記載内容も臨床医によって様々になる傾向にあります。


今回は、こうした臨床医学における課題を包括的に解決する生成AIサービス、Ambience Healthcareを紹介します。




Ambience Healthcareの概要

Ambience Healthcareは、MIT(マサチューセッツ工科大学)で出会ったMichael Ng氏とNikhil Buduma氏によって設立された、サンフランシスコに拠点を置くヘルスケアスタートアップです。

2024年2月初め、Ambience HealthcareはシリーズBラウンドで7,000万ドル(約104億円)の資金調達を行いました。

この資金調達は、Kleiner Perkins と OpenAI Startup Fund が共同主導しています。Ambience Healthcareは、技術的にどういった仕組みでこのサービスを提供しているかは公表されていませんが、サービスの機能や投資を行っているファンドの構成から、生成AIが組み込まれている可能性が高いと言えます。

Kleiner Perkins と OpenAI Startup Fund は、生成AIを活用して法律AIアシスタントを提供するHarvey.aiにも8,000万ドルの出資を行っていることから、特定の業界に対し生成AI活用を行っているスタートアップに焦点を当てていることがわかります。

Ambience Healthcareは数十の異なる外来専門分野をカバーしながら、臨床医が患者とのやり取りをする中で発生する管理作業を、大幅に効率化するサービスを展開しています。




Ambience Healthcareの機能

Ambience Healthcareのコア機能は、「AutoScribe」「AutoCDI」「AutoAVS」「AutoRefer」「AutoPrep」の5つからなります。1つ1つ、詳細を解説していきます。

AutoScribe

AutoScribeは、救急部門の臨床医を含む全ての診療科に対応した、患者と医者の会話から患者の症状・症状が出始めた時期や背景・診断内容・治療法などを構造化したメモを生成してくれる機能です。

数十の専門分野の用語も識別することができ、複数人が同時に話した時の音声認識や、複数言語の翻訳、翻訳者が別言語で同様の内容を話していること(つまり重複して文字起こしをする必要がないもの)などを認識した上で、構造化されたメモを生成することが可能です。

また、AutoScribeにより生成されたメモは、自動的に各患者のEMR(Electronic Medical Record:電子カルテ)に追加されるようになっています。そのため、電子カルテに情報を記入する工数も削減できます。

(引用:https://www.ambiencehealthcare.com/product


またAutoScribeのように、患者とのやり取りから構造化されたメモを作成する生成AIサービスを提供している、Nablaというスタートアップがあります。

詳しくは下記の記事に記載されていますので、興味があれば読んでみてください。

患者との会話から電子カルテを自動作成する 生成AI:Nabla Copilot



AutoCDI

AutoCDIは、臨床医と患者との会話や過去のEHR(Electronic Health Records:電子健康記録。EMRは患者が来院した医療機関のみで扱われるが、EHRはそうでない医療機関にも広く共有される。)の記録を分析し、ICD-10コードやCPTコードを正確に割り振る機能です。

※ ICD-10コードとはWHOが作成している国際疾病分類コードのことです。死亡や疾病のデータを体系的に記録・分析するために使用されます。(引用:https://works.litalico.jp/column/system/039/

また、CPTコードとは医療処置および請求に使用されるコードのことです。(引用:https://www.capterra.jp/glossary/514/cpt-current-procedural-terminology

(引用:https://www.ambiencehealthcare.com/product

冒頭で少し触れましたが、患者と医師との会話を記録に残し、そこからAutoCDIで扱うようなCPTコードを割り当てる部署と、請求業務を行う部署は独立していることが一般的です。

本来であればCPTコードから請求内容を構成した方が、診断内容と請求内容に齟齬が生じることは少ないですが、これらの業務が独立しているため請求業務を行う人たちは、コードが割り当てられていないメモから請求内容を作成しており、監査上の問題や請求内容を巡って患者との訴訟になることが珍しくありません。AutoScribeとAutoCDIの機能により、診断内容と請求内容に齟齬が生じにくくなります。



AutoAVS

AutoAVSは、患者やその家族・介護者向けに、処方された薬の説明や家ですべきことなどを共有する機能です。

下記の画像では、

・糖尿病の治療のためにメトフォルミンを服用すること

・夕食中に1日1回服用することで、血糖値を下げる効果があること

・服用開始時に吐き気を感じる場合があるが、徐々に改善されていくこと

・過度の嘔吐や脱水症状がある時は、ただちに医療機関に連絡すること

などが記載されています。

(引用:https://www.ambiencehealthcare.com/product



AutoRefer

AutoReferは、臨床医の間で患者情報の引き継ぎや、長期管理のために紹介先の専門医から一般診療医に患者を戻すときの情報共有を効率的にするための機能です。

紹介状を作成するときに、各専門領域ごとに統一されたフォーマットや記載内容が担保されるような、生成AIが組み込まれた機能であることが予想されます。

(引用:https://www.ambiencehealthcare.com/product




AutoPrep(Coming Soon)

まだ一般公開されていない機能ではありますが、AutoPrepは過去の診断や症状の経過、事前にヒアリングした内容などを記録した文書から、患者の診察を行う前に疑いのある病気をスクリーニングするための機能です。

日々忙しい臨床医にとって、診察を行う上で強力なサポートとなることが期待されます。

(引用:https://www.ambiencehealthcare.com/product





数十の外来専門分野の用語に対応した音声認識と文字起こし機能

音声認識から文字起こしを行う生成AIが、実用的でないと捉えられやすい課題として、専門用語を音声認識できないケースや、大規模言語モデルが専門用語の意味を理解していないケースが多いことが挙げられます。

Ambience Healthcareは、数十の専門領域の用語に対応して音声認識と文字起こしを行うことができます。

(引用:https://www.ambiencehealthcare.com/specialties



上記の画像は、Ambience Healthcareが対応している専門領域のうちの一部ですが、各専門領域特有の知識を理解した上でメモを生成することが可能です。

こちらの記事によれば、ジョン・ミューア病院泌尿器科医のリチャード・ロングという医師が、

「毎回の診察に泌尿器科の世界最高の医療書記、世界最高のCDI専門家、世界最高の患者体験専門家がそばにいてくれるような気がする」

という感想を述べているとのことです。

これは、臨床医の実務に耐えうるレベルで、音声認識と文字起こし、専門用語への対応が優れていることを証明しています。





まとめ

Ambience Healthcareは生成AIを活用することで、メモの作成や医療コードの割り当て、紹介状作成の自動化・効率化を実現していることがわかりました。

弊社でも会議での会話から音声認識・文字起こしを行い、構造化されたメモを議事録として作成するツールを開発しております。

また、私たちは大規模言語モデルに専門知識を埋め込む「RAG」という技術や、非構造・半構造のデータを構造化・正規化することに強みを持つ会社です。

それらの技術を活かしたプロジェクト組成やMVP開発のご支援も行っておりますし、「そもそもどのような業務に生成AIを活用できそうか」という上流工程から伴走することも可能です。「情報収集も兼ねて相談したい」というお客様も、お気軽にお問い合わせください。

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